PRESIDENT 2023年2月17日号

PRESIDENT 2023年2月17日号

「知を活かす経営戦略」

時代の変化に取り残されない知財戦略とは

北浜国際特許事務所・所長前井宏之(弁理士)

 

グループの経営コンサル部門を担う北浜グローバル経営(株)との融合により、「知財権利化」×「経営コンサル」のアプローチを強みとする北浜国際特許事務所。今回の連載企画では、9月22日発刊号の第1回目で、同所のル ーツを辿るとともに、その現状と役割を紹介。11月25日発刊号の第2回目では、所長・ 前井宏之氏が「全体最適化」をキーワードに、SDGs領域における知財活用と収益化の仕組み構築の必要性を解説。3回目となる今回は、北浜国際特許事務所のスローガン「知を活かす経営戦略」について、前井氏が実例を交えて語る。

変化の激しい時代 企業では全体最適化が重要に

【なぜ「知を活かす経営戦略」をスローガンに掲げたのでしょうか?】

近年、特許の申請や翻訳などを内製化する企業が増えたことから、私は、特許事務所のビジネスモデルを再構築する必要があると考えていました。そこで4年前から、権利化業務に依存した状態からの転換を図り、今年度になりこのスローガンを掲げたのです。「知を活かす」ことで、企業の研究開発戦略・知財戦略・事業戦略の「全体最適化」を図り、権利化を通じて経営戦略の実現に貢献します。

多くの企業では、全社の指針となる経営戦略を基に、研究開発部門・知財部門・事業部門が各戦略を策定します。これまでは、三部門で独自に打ち立てられた各戦略を実行することで、知財の「創造→保護→活用」から成る「知的創造サイクル」を回してきたのだと思います。今までの発明の規模・スピードであれば、部門の戦略の「部分最適化」で資金を回収できていたのでしょう。

しかし、地球規模で社会変革が起こる近年においては、グリーン技術、ITやAIなど、莫大な経営リソースを要する新分野の研究が急速に進みます。それゆえ、企業の投資回収のためには、知的創造サイクルを多く、速く回すことが極めて重要です。そこで必要なのが、経営戦略に基づく三戦略の「全体最適化」。これによって、各戦略が部門単位ではなく、企業規模での最適解となり、より大きな成果につながります。そのためには、各戦略が経営戦略に資する目的で進行方向を統一することが不可欠だと言えます。

企業と特許事務所の関わりにおける
経営戦略を基にした全体最適化のイメージ

だからこそ、経営コンサル視点から企業の権利化をサポートする存在が必要だと考えます。さらに、SDGsやESGへの取り組みが求められるようになった変革の近年は、自社知財の独占排他的使用よりも、権利を保持しつつ他社と連携する市場貢献によって収益の最大化を実現できる時代です。したがって、昨今の企業には、「知財部門による知財戦略」にとどまらない「知を活かす経営戦略」が重要だと考えました。

企業の方向性を踏まえた提案で収益化に貢献

【実際どのように「知を活かす経営戦略」を体現しているのでしょうか?】

ある大手メーカーの権利化を請け負う際、事業戦略・研究開発戦略を踏まえたサポートで収益化に貢献した事例を紹介します。

まず、製品に関わる複数の発明について、企業の開発者・知財担当者から説明を受けました。そして、次に弊所が行ったのは、今後の事業展開・研究開発展開のヒアリングでした。権利化のみでなく、経営戦略に寄与し収益の最大化を目的とするからこそ、ここまで理解しておくことが必須です。実際、経営戦略と事業計画を知ると、企業が当初想定していた権利化の範囲とスケジュールに修正の必要があると思われました。特許出願から権利化までの間に、出願した内容が第三者に公開されるという特許制度の特性を考慮した上で、事業を展開するのに必要な権利化を進めていく必要があったのです。そこで「モレなく・ダブリなく」の観点から発明を改めて整理・発掘し、事業計画と研究開発の進捗を加味した出願スケジュールを立案・可視化しました。

知を活かす経営戦略に基づく流れの一例

また、本事例では開発者・知財担当者と議論の上、3つの戦術をスケジュールに組み込みました。一つ目は、早期特許審査制度の利用。本ケースでは、事業化を見据えたスピーディーな権利化が求められました。二つ目は、海外特許権の取得。海外事業展開を前提とした製品に関する発明であったためです。三つ目は、特許ポートフォリオの構築。早期特許審査制度により、関連する技術領域で他社に権利化されていない発明を短期間で把握・発掘し、改良発明として自社特許公開前に出願しました。複数の発明をまとめて権利化し、特許の隙間を無くすことは、他社連携を視野に入れた、パテントプールや標準化等による収益化にもつながります。

このように、企業の研究開発戦略・知財戦略・事業戦略を踏まえ、議論を重ね、その上で特許制度を駆使した知財戦略を提案することで、権利化のみならず、経営戦略に貢献することができました。

北浜国際特許事務所にできる経営コンサル的アプローチとは

【北浜国際特許事務所の経営コンサル的アプローチとはどのようなものでしょうか?】

経営戦略への寄与と収益最大化を目的に、知財戦略をサポートすることが、弊所の経営コンサル的アプローチです。弊所は、北浜グループの一部クライアントの事業計画書作成にも携わっています。そのため、経営戦略に基づき、事業収益化の仕組みを構築するノウハウを有します。また、同グループの北浜グローバル経営は、クライアント企業全体の理解を深めた上で、事業計画を見直し、収益力強化に貢献するコンサルティングを強みとします。その知見も、グループのリソースとして日々蓄積され、弊所のアプローチにつながっていると言えるでしょう。

激しい環境変化の中、企業は投資スピードを加速していくことが求められます。それはつまり、知的創造サイクルを速く、効率的に回す必要があるということです。このように、変化に順応・適応できるか否かが企業の明暗を分ける今だからこそ、私たちは「知を活かす経営戦略」を共通のゴールとしながら、クライアントを伴走支援し、収益最大化を見据えた権利化を行ってまいります。

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