中国での人工知能に関する特許出願調査(自動運転編2)

目次

要旨:近年、人工知能や自動運転の技術開発が進んでおり、自動車大国の一つである中国での関連特許出願がますます注目されている。中国特許庁の公衆データベースを使用して、2017年から2021年までの5年間の関連公開公報のデータを基に特許出願情報を紹介する。

人工知能(AI)の産業技術は、ディープラーニングテクノロジー、音声認識、コンピュータビジョン、クラウドコンピューティング、自然言語処理、インテリジェントドライビング(自動運転)およびインテリジェントロボットという七つの技術分野に分類されている。「中国での人工知能に関する特許出願調査(自動運転編1)」に引き続き、中国企業の自動運転に関する出願情報を紹介する。

自動運転に関する中国企業の出願情報

中国企業の自動運転出願傾向を調査するために、中国特許庁ホームページの検索ツールを用いて、以下のキーワードで2017年から2021年までの5年間の自動運転関連出願の特許公開公報件数を調べた。

データベース:http://epub.cnipa.gov.cn/(中国特許公布公告)
公報公開日:2017年1月1日~2021年12月31日
発明の名称/タイトル:自動運転orインテリジェントドライビングor無人運転or運転支援orADAS(中国語:自动驾驶or智能驾驶or无人驾驶or辅助驾驶or驾驶辅助orADAS)

出願情報の全体像

自動運転に関する中国企業の出願情報の全体像として、図4に示すように、中国企業の自動運転関連出願の特許公開公報件数は、2017年の452件から2021年の1210件まで増加していた。全体的に増加しているが、2020年には前年より減少している。2016年頃の自動運転ブームにより、2018年には約2倍になった後、2018年から2021年までは年平均成⾧率約14%と、公開公報件数は増加。自動運転技術が交通渋滞の改善、交通事故の減少、運転手負担の軽減、燃費の向上、温室効果ガス排出量の減少などに貢献できること、および、外国企業よりも中国企業の公開公報件数の成⾧率が高くなっていることから、電気自動車の普及ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に向けて、中国では、自動運転に関する投資が本格的に盛り上がってきたと考えられる。

特許出願の推移

中国有数の自動車メーカーやインターネット企業である百度(バイドゥ)、東風汽車(Dongfeng)、上海汽車(SAIC)、広州汽車(GAC)、第一汽車(FAW)、上海蔚来汽車(NIO)を例として、中国企業の自動運転関連特許出願を紹介する。具体的な出願の公開公報件数の推移が図5に示されている。

図5に示すように、百度は、公開公報件数が2019年まで増えてきたが、2020年から急激に減っていた。一方、東風汽車や上海汽車は、公開公報件数が2020年まで多くないが、2021年に前年の倍以上に伸びた。第一汽車、上海汽車、東風汽車、⾧安汽車、奇瑞汽車という中国自動車メーカービッグ5の中、⾧安汽車と奇瑞汽車は、自動運転に関する特許をほぼ出願していないことから、伝統的な自動車メーカーにとって、技術方向性の変更は容易ではないと考えられる。

2020年10月、中国政府は自動車産業の新たなロードマップを発表し、2035年を目処に従来のガソリン車を廃止し、新車販売の自動車をHV、PHV、EV等の環境適応車とする方針を示した。自動運転により、安定した車間距離と速度が保てるため、大幅に燃費が向上すると考えられるため、政府の方針に従って、華為、Alibaba、テンセント、百度などの豊富な資本力を持つテクノロジー企業や、安途(AutoX)や図森未来(TuSimple)などのベンチャー企業、上海蔚来汽車、理想汽車(Li Auto)や小鵬汽車(Xpeng Motors)などの自動車新勢力企業がそれぞれ電気自動車、自動運転技術や通信技術などの開発を進めている。今後、世界の経済が回復に向かうなかで、中国企業の自動運転関連出願がより一層活発化していくと考えられる。

参照資料:http://epub.cnipa.gov.cn/(中国特許公布公告)

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