台湾のAI関連特許の最新実務情報

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AI関連発明の特許性判断基準

2021年7月1日に実施される新しい「コンピュータソフトウエア関連発明審査基準」(以下、「新CS基準」と称する)によると、「AI」あるいは「学習用プログラム」「学習済みモデル」の扱いは「プログラム」と同じと考えている。つまり、特許保護対象になることが可能である。

「学習装置」「学習済みモデルを組み込んだ装置」は、従来の「情報処理装置」として審査され、「学習方法」は従来の「情報処理方法」として審査される。一方「生データ」「学習用データセット」「学習済みパラメータ」などについては「データ」として扱うため、「単に情報の開示」とされ、特許保護対象にならないと考えている。

上記の「新CS基準」は、基本的には、日本のJPOによる「AI関連技術に関する事例」を援用し、JPOと同じ判定基準を採用している。

コンピュータソフトウエア関連発明の該当性判断

台湾では、「AI特許」について、「コンピュータソフトウエア関連発明(CS発明)」として扱うので、2021年7月1日に実施される台湾の新CS基準を簡単に紹介する。

そして、発明該当性の判断の流れについて、台湾の新CS基準に掲載されている判断フロー図を示す。

上記の表およびフロー図により、台湾の新CS基準について、発明該当性の判定基準は日本とは一致している。しかし、進歩性の判定基準はEPOのような「技術的性質に貢献しない純粋な非技術的側面は進歩性判断において考慮されない」という規定があり、請求項に記載する各発明特定事項において、技術的性質に貢献しないものについては、審査官はそれに関して引用文献を検索しなくても、当業者が日常的なシステム設計手法を用いて行える程度のものと認定することができる。

その他

最後に、参考として、人工知能に係る発明について頻出する拒絶理由について、データを元に次のように説明する。本説明は、2019年8月までに特許出願されたものに基づいたものである。なお、2019年に出願されたものはほぼ審査されている。1,567件の特許出願のうち、特許されたのは200件(49件は拒絶理由なく直接に特許されたもの)、拒絶されたのは63件(14件は期限まで意見書を提出しないもの)である。また、そのうち303件は拒絶理由通知書を受けたが、まだ査定されていないものであり、他の出願は拒絶理由通知書をまだ受けていない。

拒絶理由なく直接に特許された出願を除き、合わせて517件の出願は拒絶理由通知書を受けたことがある。そのうち、21件は発明の定義に適合しないもの(専利法第21条)、62件は明細書が明確かつ十分に記載したものではないもの(専利法第26条第1項、以下に「実施可能要件」という)、190件は請求項が不明確であるもの(専利法第26条第2項)、405件は新規性・進歩性を有しないもの(専利法第22条第1又は2項)、128件は他の拒絶理由に属するもの(そのうちのほとんどは専利法第26条第4項に規定される形式要件を欠くものであり、単一性を有しないものは2件、専利法第24条に規定されている「特許を受けることができない発明」に属するのは2件である。これらの出願は、補正することにより、拒絶理由を容易に解消できたものなので、拒絶されたものはない)である。なお、1通の拒絶理由通知書には、複数の拒絶理由を有する場合があるため、トータルは517件を超える(下図を参照)。

参照文献
(1)「台湾におけるコンピュータソフトウエア関連発明に係る特許審査基準の改訂について」、理律法律事務所、2021年7月1日
(2)「台湾におけるAI関連発明の特許適格性に関する考察」、維新国際専利法律事務所、2020年7月28日

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