目次
要旨:中国のAI関連技術の分類と発明対象、AI関連技術の明細書と請求項の書き方、AI関連特許の中国審査の状況、AI関連特許の権利侵害判断基準を紹介する。
AI関連技術の分類と発明対象
人工知能(AI)の産業技術は、ディープラーニングテクノロジー、音声認識、コンピュータビジョン、クラウドコンピューティング、自然言語処理、インテリジェントドライビング(自動運転)およびインテリジェントロボットという七つの技術分野に分類されている。
なお、機械学習は、人工知能(AI)を実現する重要なアプローチの一つである。機械学習には、教師あり学習、教師なし学習、強化学習などが含まれている。さらに、ディープラーニングテクノロジー(Deep Learning Technology、深層学習)とは、ニューラルネットワーク(Neural Network)を多層に結合し表現・学習能力を高めた機械学習の手法である。また、テクノロジー・アーキテクチャにおいて、人工知能(AI)技術は、チップ層、ベース層、知覚認知層、プラットフォーム層を含む(下図を参照)。
中国特許法によると、上の図のうち、データ以外のものを発明対象にすることができる。例えば、アルゴリズムの場合、アルゴリズムフレームワークとアルゴリズムモデルがある。また、ディープラーニングテクノロジーとしては、教師あり学習、教師なし学習、小さなサンプル学習、転移学習、漸進的学習、連合学習などがある。一方、アルゴリズムモデル構造としては、軽量ニューラルネットワーク構造設計、自動化軽量ネットワーク設計、モデルの圧縮、マルチデバイス分散コラボレーションなどがある。
AI関連技術の明細書と請求項の書き方
アルゴリズムの特徴を含む特許出願の明細書は、その発明が技術的課題を解決するために採用する解決案を明確かつ完全に記載しなければならない。解決案は、技術的特徴を含めた上で、更に技術的特徴と機能上支持し合い、相互作用関係にあるアルゴリズムの特徴を含める。
明細書の中では、技術的特徴と、これと機能上支持し合い、相互作用関係にあるアルゴリズムの特徴がどのように共同作用し、かつ有益な効果を発生するかを明記しなければならない。例えば、アルゴリズムの特徴を含める際に、抽象的アルゴリズムと具体的技術分野とを結合させなければならない。少なくとも一つの入力パラメータおよびその関連出力結果の定義を技術分野の中での具体的データと対応・関連させなければならない。
請求項に関して、例えば、畳み込みニューラルネットワークCNNモデルの訓練方法の場合、ニューラルネットワーク訓練アルゴリズムと画像情報処理との密接な関連が反映される必要があり、技術的特徴と機能上支持し合い、相互作用関係により計算方法の最適化を実現するように記載される。なお、経済学的法則に従って経済管理の手段を採用するだけで、自然法則には支配されていない。そのため、技術的手段を利用していない発明は、専利法第二条第二項に規定する技術的解決手段に該当せず、専利保護の客体には該当しない。
AI関連特許の中国審査の状況
中国国家知識産権局は、知財関係者からのニーズに対応し、人工知能(AI)など新分野・新業態にかかる専利出願審査規則をより明確にするため、「専利審査指南」の改正を決定した。「専利審査指南」の改正に関する公告が、2019 年12月31日に公表され、2020年2月1日より施行されている。
「専利審査指南」第二部第九章には、次のように第6節が追加されている。
AI関連特許の権利侵害判断基準
2019年12月に公表された「専利侵害紛争行政裁定案件処理ガイドライン」には、権利侵害判定に関して、「第三章専利権侵害行為の認定」と「第五章第一節発明、実用新案専利権侵害の判定」が規定されている。
なお、「製品製造方法専利の保護拡張」とは、ある製品製造方法について発明専利権が付与された後、いかなる組織または個人も専利権者の許諾を得ずして、生産・経営を目的に当該専利方法を使用してはならず、生産・経営を目的にその専利方法によって直接得られた製品の使用、販売の申し出、販売または輸入をしてはならないことをいう。
オール・エレメント・ルール(All Element Rule)原則は、技術方案が発明または実用新案専利を侵害するか否かを判断する際の基本原則であり、その具体的な意味は、侵害被疑技術方案が専利権の保護範囲に入るか否かを判定する際に、権利者の主張する専利クレームに記載されたあらゆる技術的特徴を審査しなければならないことである。
参照文献
(1)「専利審査指南」の改正に関する公告(第343号)、中国特許庁、2019年12月31日
(2)「中国の人工知能産業の知的財産白書2020」、中国人工知能産業開発アライアンス(AIIA)、2021年2月
(3)「ディープラーニングに関するAI分野の特許クレーム作成」、隆天知的財産、2019年9月
(4)「特許法を考えた人工知能技術とその保護戦略」、IPRdaily中文網
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