PATENT 米国特許制度の概要とフローチャート

出願

特許のプロセスは、米国特許商標庁(USPTO)に本出願を提出することで始まる。特許出願とは、本出願、PCT出願の国内段階移行出願、先に出願した外国出願の優先権を主張するパリ条約出願、最初に提出した仮出願を本出願に変更する出願のいずれかである。

まず、仮出願と本出願との違いを理解することが重要である。仮出願は、出願人が発明を発展させて最終段階になるまでの間または特許化プロセスを継続するか否か決定するまでの間、発明または発見を保護するために提出される。本出願は正式な特許出願であり、発明が実際に特許保護を受けられるかどうかを判断するための審査が開始される。特許出願には一般的に、発明の明細書と少なくとも1つのクレーム(特許請求の範囲)、必要であれば図面、発明者による宣言書または宣誓書、特許出願・調査・審査に要する費用が含まれる。特許出願は、英語以外の言語で提出することも可能である。ただしその場合、一定期間内に英語翻訳文、翻訳文が正確であることを確認する供述書および手数料を添えて提出しなければならない。完全な特許出願には、特許出願送付書または送付状、手数料送付書および必要な手数料、ならびに出願データシートも含まれる。 また、出願がバイオテクノロジーの主題を対象としている場合、アミノ酸配列リストを提出しなければならない場合がある。一般に、出願人が非公開と申請しない限り、特許出願は最も早い出願日から約18カ月で公開される。

特許審査の流れ

特許出願の出願手続きが完了すると、審査が開始される。このプロセスは審査段階(prosecution stage)と呼ばれ、審査官が出願を審査し、方式違反や拒絶理由があれば、最初のノンファイナルオフィスアクションという形で出願人に送付される。出願人は、審査官の方式違反および拒絶理由のそれぞれに対応して応答しなければならない。オフィスアクションに対する応答の多くは、オフィスアクションの発送日から6カ月以内に提出しなければならないが、短縮法定期間後に応答した場合は、期間延長手数料を支払う必要がある。通常、応答のための短縮法定期間は、受け取ったオフィスアクションの種類にもよるが、オフィスアクションの発送日から2カ月または3カ月に設定されている。 最も一般的なオフィスアクションは、限定/選択要求、ノンファイナルオフィスアクション、ファイナルオフィスアクションの3つである。

限定/選択要求

限定/選択要求は、USPTOからの通知書の一種であり、審査官によって特許出願が2つ以上の発明を対象としていると判断した場合に発行される。応答のための短縮法定期間はオフィスアクションの発送日から2カ月に設定され、さらに4カ月の期間延長が可能である。

限定要求は、出願が異なる法定クラスの発明を対象とするクレームを含む場合に審査官によってなされる。例えば、出願のクレームがそれぞれ装置、方法および製品に向けられている場合や、クレームを決定するプロセスによって製造される製品に向けられる場合もある。このような場合、審査官は、1つの出願が複数の法定クラスの発明を含むため、審査プロセスに過度の負担がかかることを示せば、出願人に、当該出願で特許を求める法定クラスの発明を選択するよう求めることができる。出願人が選択されなかった発明の特許性を求めたい場合は、分割出願または継続出願をすればよい。

審査官は、出願に同じ法定クラスに属する2つ以上の特許性の異なる発明が含まれていると判断した場合、「種の選択」を要求することで、最初の審査に対して1つの種を選択し、その種に関連するクレームを通知するよう出願人に要求することができる。クレームは、1つ以上の種に向けられていることがあり、すべての種に向けられるクレームは、ジェネリッククレームとみなされる。ジェネリッククレームの特許性が認められると、選択されなかった種に向けられた全てのクレームが再結合され、特許性が同様に認められることになる。

ノンファイナルオフィスアクション

ノンファイナルオフィスアクションは、USPTOからの通知書の一種であり、審査官が特許出願とクレームに関してUSPTOが従う現行の法令と、規則に基づく方式違反または拒絶理由を提示するものである。審査官は、審査過程において、出願が新規性、非自明性、有用性など特許性の要件をすべて満たしているかどうかを判断する。ノンファイナルオフィスアクションの場合、応答のための短縮法定期間はオフィスアクションの発送日から3カ月に設定され、手数料を支払えばさらに3カ月の期間延長が可能である。ノンファイナルオフィスアクションに対する応答で、審査官の見解がなぜ正しくないかについての議論または明細書、もしくはその両方、クレーム、図面の補正書を提出し、これらの法令、規則に出願を適合させる必要がある。出願人は、審査官とのインタビューを設定し、出願を許可可能な状態に導くよう試みることができる。出願人からの応答があると、審査官は特許性の基準をすべて満たしているかどうかを判断し、満たしていない場合はファイナルオフィスアクションを発行し、満たしている場合は許可通知を発行する。

ファイナルオフィスアクション

ファイナルオフィスアクションは、USPTOからの通知書の一種であり、ノンファイナルオフィスアクションに対する出願人の応答を審査官が確認した結果、応答中の出願人の主張や補正の一部もしくは全てが許可可能条件を完全には満たしていない、または許可可能条件を満たすだけの説得力がないと判断した場合に発行される。ファイナルオフィスアクションの場合、応答のための短縮法定期間はその発送日から3カ月に設定されており、手数料を支払えばさらに3カ月の期間延長が可能である。出願人は、ファイナルオフィスアクションに対して応答する権利があるが、ファイナルオフィスアクションに対する応答の選択肢はやや制限されている。また、出願人は、審査官とのインタビューを行うことができるが、インタビューの可否は審査官の裁量に委ねられている。

アドバイザリ通知

アドバイザリ通知は、USPTOからの通知書の一種であり、出願人がファイナルオフィスアクションに対して応答した場合に発行される。応答がファイナルオフィスアクションで述べた要件を満たしていない、または出願が許可される状態にはないと引き続き考える場合、審査官はその旨を示すアドバイザリ通知を発行する。

アドバイザリ通知に対する一般的な応答は、ファイナルオフィスアクションにおける審査官の判断に対して出願人が控訴する意向を示す審判請求と、出願人が出願審査の継続を希望する継続審査請求(RCE)のどちらかである。出願の係属性を維持するためには、ファイナルオフィスアクションに対する応答のための6カ月が経過する前に、これらの応答のうちの1つを行う必要がある。

審判請求

審判請求はファイナルオフィスアクションに対する応答の一種であり、出願人が審査官の見解に同意せず、審判手続きに進むことを希望する場合に提出される。出願人は、審判請求書提出時に、審判前協議請求書を提出することも可能である。審判前協議では、審査官は他の2名の審査官のうち少なくとも1名にその見解を同意させなければならない。審判前協議請求書を提出しないか、他の2名の審査官のうち少なくとも1名が審査官の初めの見解に同意した場合、出願人は審判請求書を提出してから2カ月以内に審判請求理由書を提出する必要がある。

審判の流れ

審判請求理由書が提出されると、審査官は審判請求理由書の内容を確認し、出願人の見解に同意して出願を特許許可するか、出願人の見解に一部同意して出願の審査を再開するか、または審査官が出願の特許可能性に関する見解を維持する場合は、出願人の審判請求理由書に対して審査官の回答を送付する。この時点で、出願人は、審判請求理由書の取下げと継続審査請求(RCE)の提出、または審査官の回答で初めて問題が提起された場合は弁駁書の作成および提出、または単に審判を進めるよう求めることができる。弁駁書の提出または審判継続要求をする場合には、所定の審判料を納付しなければならない。

継続審査請求

継続審査請求(RCE)は、ファイナルオフィスアクションに対する応答の一種であり、出願人がさらなる反論や出願の追加補正を行い、審査官にその補正や反論を十分に検討することを要求する場合に行うものである。RCEを行う場合は、クレームを規定した発明の補正書、情報開示陳述書、または以前にエントリーされなかった補正書のエントリーの要求などを提出するが、これらに限定されない。

通常、継続審査請求がされると、審査官は審査を再開し、出願が許可可能な状態にないと引き続き考えられる場合は、ノンファイナルオフィスアクションを発行する。ファイナルオフィスアクションに対する応答または以前にエントリーされなかった補正のエントリーの要求とともに継続審査請求書が提出され、審査官がその補正により出願が許可可能な状態にあると考える場合、審査官は許可通知を発行する。

許可通知

許可通知は、USPTOからの通知書の一種であり、特許出願が許可可能な状態にあること、つまり特許性の条件をすべて満たしていることを示す通知である。出願人が特許発行料送付票を提出し、特許料を3カ月の期限(延長不可)内に支払うことで、プロセスは完了する。通常2〜3カ月で特許証が発行される。出願人は特許証の発行前に、関連する継続出願または分割出願の手続きを行うことができる。

USPTOが特許を付与・維持年金・権利失効

USPTOが特許を付与した後、特許付与日から3年半、7年半、11年半の節目に維持年金を支払う必要がある。維持年金とは、特許の権利行使可能性を維持するために、USPTOに支払わなければならない費用である。特許の有効期限は、米国への本出願またはPCT出願の出願日から20年である。

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