DESIGN 米国意匠制度の概要とフローチャート

出願

米国における意匠特許の特許プロセスは、実用特許の場合と同様に、まず、米国特許商標庁(USPTO)に意匠特許出願を提出する。出願の形式は、最初の意匠特許出願、以前に提出された外国出願における優先権主張のパリ条約出願、またはハーグに提出された出願の米国の国内移行出願などがある。

意匠特許出願の場合、発明が実際に意匠特許保護を受けることができるか否かを決定するために、審査プロセスを開始する。意匠特許出願には、通常、発明の説明と単一のクレームのみを含める必要がある。意匠特許出願の明細書には、書面による説明と、1つまたは複数の図面から構成される。意匠特許出願の図面は通常、デザインの斜視図、およびデザインの上面図、底面図、前面図、背面図、右側面図、および左側面図という7つの図が含まれる。一方、グラフィカルユーザーインターフェース(Graphical User Interface,GUI)やアイコンの意匠特許出願の場合、1つの図のみを提出可能である。物品が適切に開示されていれば、1つまたは複数の図を省略することができる。すべての意匠特許出願は英語で行うか、翻訳が正確であることを確認する声明付英語の翻訳と料金を含める必要がある。翻訳文は、非英語出願の後に提出してもよい。意匠特許出願には更に、発明者による宣言書または宣誓書、意匠特許出願送付フォームまたは送付票、料金送付票と必要な料金、および出願データシートの提出を含む。

非仮実用出願と異なり、意匠特許出願には、「図示および説明されている(物品を特定する)に係る装飾的意匠」を対象とする単一のクレームが含まれる。

また、非仮実用出願と異なり、意匠特許出願は公開されず、審査プロセス全体を通して秘密のままで行う。ただし、「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」に基づく意匠特許出願の場合は、出願してから6カ月後に公開される。

特許審査の流れ

最初に、実用特許とは異なり、意匠特許は、物品の使用方法や機能ではなく、物品の装飾的な側面を保護することに注意する必要がある。意匠特許出願の手続きが完了すると、審査が開始される。このプロセスは審査段階と呼ばれ、審査官が出願を検討し、オブジェクションおよび/またはリジェクションを示す最初の拒絶理由通知(Non-Final Office Action)を出願人に送付する。出願人は、審査官によるオブジェクションおよびリジェクションについてすべて応答しなければならない。拒絶通知に対する応答は、拒絶通知の郵送日から6カ月以内に提出する必要があるが、短縮法定期間の後に提出される場合、出願人は延長料金を納付する必要がある。応答の短縮法定期間は、受け取る拒絶通知の種類にもよるが、通常、拒絶通知の郵送日から2カ月または3カ月以内である。最も一般的な拒絶通知は、限定/選択要求(Restriction/Election Requirement)、最初の拒絶理由通知(Non-Final Office Action)、および最後の拒絶理由通知(Final Office Action)という3つがある。

限定/選択要求

限定/選択要求は、意匠特許出願が複数の発明に該当すると審査官が判断した場合に、USPTOにより発行される公式書簡の1つである。これは実用特許と似ている。限定/選択要求の応答の短縮法定期間は拒絶通知の郵送日から2カ月以内であり、さらに4カ月の延長が可能である。

審査官は、意匠特許出願に単一のクレームのみを含むことから、出願に互いに区別可能な2つ以上の発明が含まれると判断した場合、限定要求を作成する。これに加えて、審査官は、1つの出願に複数の発明が含まれることが、審査プロセスの深刻な負担となることを示すことができれば、出願人に対して発明を選択して現出願において限定するよう要求することができる。出願人が「選択されなかった」発明についても権利化を希望する場合、1つまたは複数の分割出願または継続出願を行うことができる。

ノンファイナルオフィスアクション

ノンファイナルアクションは、USPTOにより発行される公式書簡の1つであり、審査官が、USPTOが従う現在の法令および規則に基づいて、意匠特許出願明細書および図面に関してオブジェクションおよび/またはリジェクションを提示する。審査プロセスにおいて、審査官は出願に対し、その明確性、新規性、非自明性などの特許要件が満たされているか否かについて審査を行う。ノンファイナルアクションの応答の短縮法定期間は拒絶通知の郵送日から3カ月以内であり、さらに3カ月の延長が可能である。ノンファイナルアクションに対する応答には、審査官の意見が間違っている理由、および/または特許要件を満たすために、特許出願の明細書や図面に対して行われた補正に関する主張を含む必要がある。また、出願人は、出願を許可するよう審査官を説得するために、審査官と面談することができる。応答が提出されると、審査官は、すべての特許要件が満たされているか否かを判断し、満たされていない場合は最後の拒絶理由通知を、満たされている場合は許可通知を発行する。

ファイナルオフィスアクション

ファイナルオフィスアクションは、審査官が出願人のノンファイナルアクションに対する応答を検討し、出願人の一部またはすべての主張および/または補正が完全に要件を満たしておらず、または該出願を許可するのに十分な説得力がないと判断した場合に、USPTOにより発行される公式書簡の1つである。最後の拒絶理由通知に対する応答の短縮法定期間は、拒絶通知の郵送日から3カ月以内であり、さらに3カ月の延長が可能である。出願人は、最後の拒絶理由通知に対して意見を申し述べる権利を有するが、可能なオプションは制限されている。出願人は、審査官と面談することも可能であるが、面談の許可は審査官の裁量に任されている。

アドバイザリ通知

アドバイザリ通知は、審査官が出願人の最後の拒絶理由通知に対する応答について、依然として該出願が要件を満たしておらず、特許とならないと判断した場合に、USPTOにより発行される公式書簡の1つである。
アドバイザリ通知に対する一般的な対応として、出願人が審査官の最後の拒絶理由通知決定を不服とし、上訴することを示す審判請求を行うか、継続特許出願(Continuing Patent Application,CPA)を行うことである。アドバイザリ通知に対する一般的な対応として、実用特許出願の場合、出願人が出願の審査の継続を希望することを示す継続審査請求(Request for Continued Examination,RCE)を提出するが、意匠特許出願の場合は、CPAを提出する必要がある。出願の保留を維持するために、最後の拒絶理由通知に対する応答期間の6カ月以内に上記いずれかの対応を行わなければならない。

審判請求

意匠特許出願の審判請求は、最後の拒絶理由通知に対する対応の一種として、出願人が審査官の意見を不服とし、審判プロセスを進めることを希望する場合に行われる。この点は実用特許と似ている。出願人は、審判請求を行うとともに、理由補充前審査請求(Pre-Appeal Brief Request for Review)を行うことができる。この場合、他の2人の審査官のうち少なくとも1人が最初の審査官の意見に同意する必要がある。該理由補充前審査請求が行われず、または他の2人の審査官のうち少なくとも1人が最初の審査官の意見に同意する場合、出願人は、審判請求から2カ月以内に審判理由補充書(Appeal Brief)を提出しなければならない。

審判手続き

審判理由補充書が提出されると、審査官はその内容を検討し、出願人の意見に同意する場合、特許を許可し、出願人の一部のみの意見に同意する場合、審査手続きを再開することができる。あるいは、審査官が登録査定の可能性に関して依然として自分の意見を維持する場合、出願人の理由補充書に対する審査官の答弁を送付する。この場合、出願人は、上訴を取り下げてCPAを提出するか、審査官の答弁に対する弁駁書(reply brief)を準備して提出することができる。あるいは、単に特許公判審判部(Patent Trial and Appeal Board,PTAB)に上訴することができる。弁駁書の提出または審査手続きの継続の要求には、必要な審判料を納付しなければならない。

継続出願手続き

継続出願手続き(CPA)は新規申請と見なされるため、親出願はCPAを優先して放棄されなければならない。CPAを提出する場合、出願人は、新規出願のすべての正式な要件を満たし、基本的な出願料を支払う必要がある。したがって、出願人は、意匠特許出願の審査を継続するために、基本的に新たな出願を提出しなければならない。RCEと異なり、出願人は親出願の最新の拒絶通知に対する応答だけでなく、出願全体を提出しなければならない。CPAとRCEは、実務上、手続きに大差がない。通常、CPAは親出願と同じ審査官に割り当てられ、審査が中断されたところから続行される。

特許査定

特許査定は、USPTOにより発行される、特許出願が許可されたことを示す公式書簡である。該特許出願がすべての特許要件を満たしていることを意味する。出願人が発行送付票を提出し、3カ月以内(延長不可)に発行料を納付すれば、手続きが終了となる。意匠特許出願は通常公開されないため、公開手数料が掛からない。通常、特許状は2~3カ月で発行される。その前に、出願人は関連する継続出願または分割出願を提出しなければならない。

USPTOによる特許付与、有効期限

意匠特許は、実用特許と異なり、USPTOにより発行されると、存続期間中に維持費を支払う必要がない。意匠特許は、有効期限が発行日から起算して15年間である。それに対し、実用特許は、有効期限が米国の非仮出願または優先権主張のPCT出願の最初の出願日から起算して20年間である。

CONTACT

お問い合わせ

特許・意匠・商標の国内・国外出願に関するご依頼はフォームよりお問い合わせください。