その画像は本当に掲載OK?社会人なら知っておきたい著作権の基礎知識

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4月も後半になり、新社会人の方は職場の空気に少し慣れた頃でしょうか。
入社式や研修、社内外へのご挨拶も終え、もしかするとそろそろ資料作りを始めるタイミングかもしれませんね。

学生時代に論文を書かれた方なら「参照元や引用元」を明記したことを覚えていらっしゃると思います。

社外用の資料を作るときにも、同じように参照元や引用元を明記しているでしょうか?インターネットで検索した画像やテキストをそのまま貼り付けていませんか?
それらを無断で使用してしまうと、最悪の場合は訴訟に発展してしまうかもしれません。そうならないために知っておきたいのが「著作権」についてです。

広告などの下に小さく「」がついているのを見たことはあるでしょうか?
あれこそ、「著作権」を表すマークです。
「著作権」という言葉自体は聞いたことがある方も多いと思いますが、なんとなく知っているだけ、という方も多いはず。

実際のケースと併せて、社会人なら知っておきたい「著作権」の概要と注意点をお伝えしていきます。

著作権とは

著作権をとても簡単に言うと、「権利を持つ人だけが自由に使える権利」です。
実は法律上では「著作権」という名前で規定されているわけではありません。

文化庁の説明がわかりやすいので引用します。

“著作者の権利は、他人が「無断で○○すること」を止めることができる権利であり、大きく分けると「著作者人格権」と「著作権(財産権)」の2つで構成されています。「著作者人格権」は著作者の精神的利益を守る権利であり、「著作権(財産権)」 は著作者の財産的利益を守る権利です。 著作権法には「著作権」という名称の権利は規定されておらず、複製、上演、演奏、公衆送信といったように利用形態ごとに権利が規定されています。 このため、複製、上演、演奏、公衆送信などの利用の都度、著作権が及ぶということを理解しておくことが重要です。”

引用:文化庁「著作権」とはどのような権利か


マークとマークの違いは?】

マークが表すもの:「Copy right」の頭文字であるアルファベットの「C」を略したもので、著作権を表します。
マークが表すもの:「Registered」の頭文字であるアルファベットの「R」を略したもので、商標登録済みの商標を表します。

著作権を侵害すると何が起きるか

訴訟や賠償など、法的なトラブルに発展することがあります。
実際の例をご紹介します。

画像を無断使用。25万3,000円を支払うことに

とある学校のホームページに、インターネット上で保存した画像を1点掲載していました。
ホームページ上からは3年後に削除したものの、サーバーには画像が残っている状態でした。
利用規約には使用料が発生すると書かれていました。

掲載から7年後、イラストの作成者より無断使用を指摘されます。
ホームページに3年掲載+サーバー上に4年間残存(画像URLを打ち込めば誰でも閲覧できる状態)=合計7年分の使用料相当額として25万3,000円を支払うことで示談が成立しました。

資料の作成時に注意したいポイント3つ

①資料に使おうとしている写真やイラスト、文章などに著作権があるかどうか
②許可なく使用していいものか
③著作権を侵害しているか

1つずつ見ていきましょう。

資料に使おうとしている写真やイラスト、文章などに著作権はあるのか

まずは、著作権が発生するのか、しないのかという点です。

そもそも著作権とは、思想または感情が表れているもの=著作物に発生します。
小説や脚本、論文や講演、絵画などは想像しやすいですね。

著作権法では他にも、地図や図面、図表、写真を著作物の例として挙げています。

参考:e-Gov法令検索

逆に、著作物にあたらないものは以下の通りです。

・ありふれた表現や題名、ごく短い文章
・歴史的事実やデータ※1
・事実の伝達にすぎない時事報道など
・プログラム(本体ではなく、構成言語やアルゴリズム※2)
・保護期間が満了した著作物(原則、著作者の死後70年まで)
・アイデア(表現した本などは著作物に該当する)
・実用品のデザイン(意匠権の対象)

※1 企業が独自でアンケートを実施した回答結果などは、場合によっては著作物として法律上で保護される可能性もあります
※2 解法

無許諾で使用していいものか

そもそも著作権は、著作者の経済的利益と、情報を利用する社会一般との調和を図る必要性から、使用に対する制限が設けられました。
つまり、著作権者の権利は守られるべきものですが、著作権者の利益ばかり優先すると、この情報社会の中で混乱することも予想されます。
法の目的である「文化の発展」のため必要とされるケースについては無許諾での利用が認められるということです。

以下の制限要件を満たせば、無許諾で利用が可能です。

【例外的な制限要件】
・私的使用のための複製(第30条)
・図書館における複製(第31条)
・引用・行政への広報資料等の転載(第32条)
・教科書への掲載(第33条)
・事件報道のための利用(第41条)
・裁判手続における複製(第42条) など

会社で作成する資料の場合は「引用」の制限要件に注意しましょう。

引用とは

無許諾で使用できる引用の範囲は、第32条で規定されています。

・公表済の著作物
・公正が慣行に合致
・引用の目的上正当な範囲内

この3つの範囲内で利用できます。

引用する場合の注意点は主に6つです。

(1)必要性
他人の記事を批評する場合には、その記事を引用しなければ批評できないため、引用の必要性が認められています。

(2)明瞭区別性
ここからここまでが引用ですと明確にしておく必要があります。例えば引用部分に「」(カギかっこ)を使用する、引用部分を太字にするなど、誰が見ても引用であることがわかるようにしておきましょう。

(3)主従関係(附従性)
引用部分の割合は、最終創作物の全体を10割とした場合、全体の1割程度までにとどめることが推奨されています。つまり、引用と認められるためには、オリジナル(自作)部分と引用部分との間に圧倒的な差が必要だということです。

(4)同一性
要約の方法によっては、引用元の著作物の趣旨に反することになる可能性もあるため、要約する場合には十分に注意しなければなりません。

(5)出所明示義務
文献から引用する場合には、文献の名称と著者名を、WEBサイトから引用する場合にはWEBサイトの名称とURLを明記する必要があります。

(6)孫引き
既に引用されたものから引用してしまうことを「孫引き」といいます。
引用しようとしている情報のどこかに「●●より引用」と書いてある場合は、その「●●」から引用する必要があります。
元の文献から引用する際に、引用方法や記載内容を間違えて引用している可能性もゼロではありません。間違った引用を防ぐためにも、オリジナルの文献を必ず確認しましょう。

他にも、例えば出版物、特に電子書籍の場合は、出版社ごとに著作権法における引用ルールとは別にルールを設けている場合があるため注意してください。
無断転載禁止と記載があれば、許可なく引用することはできません。

【画像を引用する場合】

他人が作成した画像・映像を引用・転載する場合は、著作権以外にも肖像権やパブリシティ権に配慮する必要があります。

肖像権:個人の顔や容姿などが勝手に撮影・公表されないように保護する権利
パブリシティ権:いわゆる「有名人」が持つとされる、自身の肖像・氏名などから発生する経済的利益を保護するための権利

著作権を侵害しているか

結局どこからが著作権侵害になるのかは判断が難しい場合もあります。
もっと細かい規定はあるものの、簡易チェックシートをご用意しました。ぜひご活用ください。

著作権侵害簡易チェックシート

資料に使おうとしているイラストや文章をインターネットから流用する場合は、特に注意が必要です。
ご自身が作ったもの以外を著作権者の許諾なく使用すると、著作権侵害になる恐れがあります。

まとめ

冒頭でご紹介したように、イラストを1点掲載したことで25万円もの示談金を支払うことになった例もあります。
インターネットに掲載されている情報を軽い気持ちで転載すると、所属している企業にも影響しかねません。

資料を作る際は著作権を意識し、本当にそのデータや画像、文章は必要か、引用の仕方や引用元の書き方に問題はないかをぜひ意識していただければと思います。

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